「鉄のカーテンが、下ろされた」。1946年にチャーチルが発した言葉は、東西冷戦の始まりを告げるものになった。こちらの発言も人々の記憶に残ることになるか。米国と中国の間に「経済的な鉄のカーテンが下ろされるかもしれない」▼元米財務長官ポールソン氏が昨年11月に口にした。中国企業が技術を盗んでいるとして、米ビジネス界は反発する。米政界にも反中感情が広がり、中国への対決姿勢は強まる一方だ。それは長い目で見て米国経済にマイナスになると警鐘を鳴らした▼残念ながら懸念は的中しつつある。米政府は中国からの輸入品の関税を引き上げ始めた。さらには中国の通信機器大手に部品を売ることも米国企業に禁じた▼中国が通信技術で主導権を握れば、安全保障上の脅威にもなる。今や軍隊も兵器も通信の網の目のなかにあり、軍事情報が中国の手に渡るかもしれない――。そんな心配からの兵糧攻めだ▼米国外交の伝統をぶち壊してきたトランプ氏である。しかし、こと中国との摩擦は「トランプ問題」とは言えない。党派を超えて、強硬姿勢が広がっているのだ。民主党幹部が大統領にあてたツイートが物語る。「屈するな。力こそ中国に勝つ唯一の道だ」▼「新種の冷戦」。英誌エコノミスト最新号は米中摩擦をそう表現した。かつての米ソの貿易量は1年に20億ドル、現在の米中は1日に20億ドル。同誌が載せた数字は両国がいかに深く絡み合っているかを示す。全面対立がいかにばかげたことかも。