昇る太陽の下
「ねぇ、知ってる？ここの建物って、あの東条英機が処刑された場所だって！」
四十代の男性が二人の留学生と、池袋のサンシャイン60通りを歩きながら教える。留学生の青年たちが、少し不思議がったような顔で、進学説明会に参加してきた立派な建物のところに昔起きたことを理解しようとしていた。
「ふーん、なるほど」
「あそこ刑務所だったのね！」
「それであのビルは旭日に因んだ名前をつけたんだ」
……
　二人の青年は駅のホームで中年と分かれて、白青塗装の電車に乗った。それとなく考えことをしながら、車窓越しに日が暮れた町の景色を目で追った。
　「あそこに起きたこと、楽しそうに買い物してる人たちは知らないでしょ」女の子の方は先に静寂を破いた、優しく…
　「たぶんね、でも…」
　「なんで太陽に因んだ名前を付けたんだろう」
　「軍国主義の悪霊を祓うため、かな…」
　女の子は何かを喋り返そうとしたが、突然のアナウンスがその気を紛らわした。
　「下北沢　下北沢　…」
　駅を出た二人は、真っ直ぐライブハウスへ向かった。
　周りの人に会釈しながら通り、やっと座席に着き、ちょうどこの瞬間で透き通った声とアコスティックギターの響きが始まった。
早く行きなさい
君は生きなさい
とても守りきれないよ
君の為だったのに
早く行きなさい
君は生きなさい
君の道は君のもの
そう言えたらよかったの
さぁ明かりは消して行け
空さえ焼かれてしまったよ
やがて昇る太陽の下は
もう歩けない　＊
......
この歌声はきっと、先程の進学説明会よりも、導きになったのだろう。
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